「テリファー」、B級ホラーの真髄を体感せよ!

ホラー映画『テリファー』(原題:Terrifier)は、2016年に公開されたアメリカのインディーズホラー作品。アート・ザ・クラウンが繰り広げる、血塗られたカーニバルへようこそ。もしあなたが血が苦手なら、この映画は絶対に見ないほうがいいでしょう!それでも興味があるというあなた、その心構えで挑む価値は十分にあります。


善悪や常識をぶっ壊す快感

まず、本作の最大の特徴は、善悪の区別や物語の常識を徹底的に破壊している点。ストーリーは極めてシンプルで、ハロウィンの夜にアート・ザ・クラウンというピエロが、老若男女を理由もなく惨殺していくというものです。この突如始まる理由なき惨劇こそが『テリファー』の醍醐味。観客に「なぜ?」を考えさせる暇を与えず、次々と繰り広げられる血祭り。ここまでやりきる潔さは、B級ホラーの真髄とも言えるでしょう。


血祭り感、ここに極まれり

『テリファー』は視覚的な恐怖に全振りした作品です。血しぶきが飛び交い、人体がバラバラにされる残虐描写が延々と続きます。とても子どもには見せられない…。一部のシーンはあまりにも衝撃的で、ホラー映画慣れしている人でも思わず目を背けたくなるほど。監督のデミアン・レオーネは、この映画で「どれだけグロくできるか」に挑戦しているとかいないとか。


観る者を魅了するアート・ザ・クラウン

そして、本作の象徴的な存在であるアート・ザ・クラウン。彼の無表情かつ不気味な仕草が、見る者を恐怖の底へ突き落とします。彼は言葉を一切発さず、笑みと狂気だけでその存在感を発揮。恐怖の象徴でありながら、どこか滑稽さも感じさせるキャラクター造形が見事です。彼の登場シーンだけでも十分に価値があると言えるでしょう。実はアート・ザ・クラウンは監督のデミアン・レオーネ自身が制作し、長きに渡って彼の作品に出続けている人気キャラです。見た目の滑稽さの中にある不気味さ。そのアンバランスな魅力に観客は怖いもの見たさのような衝動に駆られてしまうのかもしれません。


謎めいたラスト―テレビに映ったのは誰?

このハロウィンの夜の惨劇がのちに「マイルズの虐殺」と言われ、唯一の生存者であるビクトリアがテレビ出演しこの時の様子を語るというシーンで映画が始まるわけですが、ビクトリアは顔をアート・ザ・クラウンに食べられていて、目も鼻もぐちゃぐちゃな状態になっています。この自称ビクトリアはテレビ出演後、控室にいる女性キャスターを殺して顔を食べ、満足気な表情を浮かべます。一方、物語の最後、自分の頭を銃で撃ち、自殺したはずのアート・ザ・クラウンは、検視直前に起き上がって検視官を襲います。アート・ザ・クラウンは生きていた?と思わせる、ホラーあるある展開。
ここで、ひとつの謎が残されました。テレビ番組に登場したビクトリアは本当にビクトリアなのか、それともアート・ザ・クラウンが化けているのか…。もしビクトリアがアート・ザ・クラウンだったとすると、ビクトリア出演のテレビ番組を、凶器の並んだ部屋で見ているピエロのメイクをした男は何者か…。視聴者に余韻を残すこのラストシーンもまた、本作の魅力の一つです。


まとめ

『テリファー』は、万人におすすめできる映画ではないかもしれません。しかし、B級ホラー特有の過激な表現や破天荒な展開が好きな方にとっては、忘れられない一作になるはずです。血塗られたカーニバルで、善悪や常識を超越した恐怖体験を味わってみてください。ただし、見る際は胃袋をしっかりと鍛えておくことをお忘れなく!