異世界に迷い込む恐怖…映画『きさらぎ駅』は都市伝説の再現に成功したのか?

『きさらぎ駅』映画レビュー:都市伝説が生んだ異世界ホラーの魅力

2000年代初頭、インターネット掲示板「2ちゃんねる」に投稿された都市伝説「きさらぎ駅」。深夜の電車に乗った投稿者が、存在しないはずの駅に降り立ち、異世界へと迷い込む――そんな不気味な話が、2022年に映画化されました。監督は永江二朗、主演は恒松祐里。都市伝説を基にしたホラー映画としてどこまで魅力的に仕上がっているのか、今回はその見どころを紹介します。


都市伝説「きさらぎ駅」とは?

「きさらぎ駅」は、2004年に「2ちゃんねる」のオカルト板に投稿された実話風の怪談です。投稿者「はすみ」さんは、いつもの電車に乗っていたはずが、見知らぬ駅「きさらぎ駅」に到着してしまいます。降りてしまった彼女は、異世界のような不気味な場所をさまよい、怪しい人物や不可解な現象に遭遇。最終的には「助けて」と書き込んだまま消息を絶つ――。この話はネット上で大きな話題となり、今でも語り継がれ、類似の体験談がいくつも語られるようになりました。ひとつの文化として日本国内に広がりを見せています。

映画『きさらぎ駅』は、この都市伝説を基にしながら、現代版の神隠しホラーとして再構築されています。


現代版神隠し×異世界ホラーの融合

映画の主人公は、大学で都市伝説を研究している葉山純子(恒松祐里)。彼女は「きさらぎ駅」について調査を進めるうちに、ついにその異世界へと足を踏み入れてしまいます。ここから、都市伝説の再現かのような不可解な出来事が次々と発生。純子は元の世界に戻ろうとしますが、出口が見つからず、得体の知れない存在が迫ってきます。

本作の魅力は、都市伝説をただ映像化するだけでなく、「異世界もの」としての側面を強調している点です。見知らぬ駅に降り立つ瞬間の違和感、不自然に静まり返った空間、不気味に近づいてくる異形の存在――「現代版の神隠し」としての恐怖が際立ちます。

また、物語は「ループもの」としての要素も含んでおり、きさらぎ駅に登場する人物は、決まって同じ人。現実の世界に戻るまで、何度もループしているのかもしれません。キーワードとしては「神隠し」、「異世界」「ループもの」などが思い浮かび、『リング』や『呪怨』とは異なる、新しいタイプのJホラーの可能性を感じさせます。


都市伝説の映像化は成功したのか?

映画『きさらぎ駅』は、低予算ながらも効果的な演出が光る作品です。特に、不穏な雰囲気を作り出す映像美や、じわじわと忍び寄る恐怖の描写は秀逸。恒松祐里の演技も素晴らしく、最後の選択に追い詰められる姿がリアルに伝わってきます。ストーリーにもひとひねり効いた展開があって、個人的には、考察の余地があって、面白いなあって思いました。

ただし、ホラーとしてのインパクトが弱めな部分もあり、時に笑いを誘ってしまうシーンもあります。ジャンル的には「Jホラーらしい恐怖」というより、「異世界サスペンス」に近い印象を受けるかもしれません。その点で、都市伝説の「恐怖」よりも、「ミステリー的な要素」で楽しむ作品なのかなという印象です。


続編に期待! 2024年公開予定

『きさらぎ駅』は、今夏に続編『きさらぎ駅 Re:』が公開予定となっています。都市伝説をさらに掘り下げるのか、異世界の謎を解明するのか、続編ならではの展開に期待が高まります。サトエリの悪そうな顔が意味ありげでしたし…。何らかの秘密があるのかもしれませんね。

都市伝説ホラーや異世界ものが好きな人には、ぜひチェックしてほしい一本です。今後の展開にも注目しましょう!