和田秀樹著:「老後にたのしみをとっておくバカ」の衝撃
はじめに
「老い」とは何か。
この問いの答えは人それぞれ違うだろう。
ある人は「筋肉の衰え」だと思うし、またある人は「美容の劣化」だと思う。はたまた「病気の発症」と思う人もいる。そのどれもが正解であり、誰しもが「老い」を少しでも遠ざけ、いつまでも若々しく元気でありたいと願い、そのような老後が待っていると信じて今を頑張っている人が多いはず。老後には今までやりたかったことや行きたかったところへ時間にもお金にも縛られず、自分の思うがままに生きてやるのだと・・・。そのために今、一生懸命働いてお金を貯めて、未来のために投資するのだと・・・。
私もそれが当たり前の考えで、そうすることが幸せな老後には必要なことだと思っていました。この本に出合うまでは・・・。
脳の老化、それは前頭葉の委縮
和田秀樹著:「老後に楽しみをとっておくバカ」
ちょっと衝撃的なタイトルですよね。本屋さんで吹いてしまいました。「バカ」と言い切られてしまって。そこまで自信をもって「バカ」と言い切れる根拠はなにか?と気になって即購入してしまいました。薄い本なので、サクサク読めます。2時間かからず読めます。
著者は長年高齢者の方々と関わってきた精神科医。患者さんの悩みに答え、またその知識を自身のアンチエイジングにも応用してきたということで、なかなか説得力があります。著書が言うには「老い」で一番怖いのは「脳の老化」。それも「前頭葉が委縮すること」だそうです。これを著者は「前頭葉バカ」と名付けています。ではなぜ「前頭葉バカ」が一番怖いのか。前頭葉バカになると次のことが起こるからです。
前頭葉バカの症状
- 意欲の低下
- 集中力の低下
- 感情の鈍化(それに伴って表情が乏しくなる)
- 変化を恐れる(何もしない)
40代オーバーの方はこれらのことに思い当たる節はありませんか。まず、何かに夢中になることがなくなりました。本や漫画、映画でも若いころの時ほどはまることはないし、何かを始めたいとは思っても、いろいろ必要なものを揃えたり、知識を学んだり、さらには新しい分野を開拓しようなどと、考えていくうちに面倒くさくなりどんどん先延ばしされ、それこそ時間が出来た老後でいいかと思ってしまいます。著者はこの「先延ばし」こそがますます「前頭葉バカ」を促し、老後には意欲の低下とそれに伴う足腰の弱まりで、老後を楽しむどころではなくなると主張しています。
前頭葉バカを助長する行為
- 毎日同じことをする
- 毎回行き慣れた同じところに行く
- 上司のイエスマンになる
- 損することを恐れる(リスクは冒さない。そのままを好む)
- 常識にとらわれる(物事に疑問を感じない)
ありがちな行為ですね。楽ですからね。そのままを維持していれば何も起こらない、波風立てず安全にいられるということで。でも、あなたの脳はいつのまにか老化して、定年になり会社をお払い箱になったあとは好きなことをやるどころか、もう何もしたくない、あるいは出来ないという状態になっています、と言うのですからぞっとしますね。
前頭葉バカにならないたったひとつの方法
そんな恐ろしい「前頭葉バカ」になる未来を回避するたったひとつの方法とは・・・
それはズバリ!
「これまでに経験したことのない新しい体験をすること!」
そしてそのような新しい体験をすることを生涯継続すること。
そんな新しい体験なんてする暇がないと思う方もいるかもしれません。でも新しい体験は何もプライベートの中だけにあるわけではなく、仕事場の中にいくらでも作りだすことが出来るものです(意欲さえあれば)。新しいプロジェクトや新しい人材の投入などを積極的にしてみてはいかがでしょうか。50代となると会社では重要なポストについている方もいると思います。残りの10年ちょっとを毎日無難に波風立てず面白味もなく仕事するのか、新しいことにチャレンジして仲間と共にいきいきと仕事するのかでは老後が全く違うことは想像に難くないでしょう。
また、新しい体験をプライベートですることを大事にしたいという方は、長年頑張ってきた仕事はスローダウンさせ、定時で帰宅を心掛けて体力を温存し、休日重視型へとシフト変換すればいい。人がいないとか仕事が終わらないとか言い続けていても、いつかあなたは定年を迎え会社からおさらばしなくてはなりません。そうなった時に会社に尽くしてきたあなたに会社は尽くしてくれますか?今までの30代までのがむしゃらな働き方を見直して、これから先いったい何が一番大事になるのかを改めて考え、いろいろな可能性を考えてみると、前頭葉がいきいきと活性化してくるでしょう。
まとめ
最後に著者は「人生は実験の連続」だと話しています。「挑戦」というと少し重くなってしまう。失敗が怖くなる。実験とは失敗を積み重ねて成功へと少しずつ近づけていくもの。「人生は実験」と捉えると挑戦のハードルも下がり、失敗をポジティブなものにすることができるのだ、ということです。
著者の、「これから50代を迎える人」、または「今まさに50代の人」に向けた精一杯のエールをあなたも受け取ってみてはいかがでしょうか。人生になんらかの変化が起きることは間違いなさそうです。