あの童謡がホラーに変貌!『メリーおばさんのひつじ』レビュー

童謡「メリーさんの羊」は世界中で親しまれている優しい歌ですが、今回ご紹介する映画「メリーおばさんのひつじ」(原題『Mary Had a Little Lamb』)はそのイメージを覆すホラー映画となっています。(2024年9月公開)本作の監督は、『MEG ザ・モンスターズ 2』のアニメーションや『キック・アス』の視覚効果を手掛けたジェイソン・アーバー。「プー あくまのくまさん」の製作陣が脇を固めていて、今や映画界を席巻するアニマルホラーに新たな名作が誕生しました。

あらすじ

未解決事件を扱うラジオ番組「カルラの迷宮事件簿」で一世を風靡したカルラだったが、最近はネタ不足で視聴率が低迷。上司から打ち切りをほのめかされます。カルラは起死回生のため話題性のあるネタを探す中で、「ワープウッズの森」で行方不明者が続出しているという情報を聞きつけます。ラジオ番組のスタッフと共にワープウッズの森へ取材に行くことに。ところが、深い森で道に迷ってしまうカルラたち。彼らは、ある一軒家にたどり着きます。そこにはメリーと名乗る女性が息子と二人で住んでいました。メリーは暖かく彼女たちを迎え入れるのですが…。

メリーおばさんの無垢な狂気

羊人間に注目がいきがちですが、この映画の本当の怖さはメリーおばさんの無垢な狂気と言えるでしょう。親しみやすい外見と優しい話し方が、田舎のおばあちゃんらしい雰囲気を醸し出しつつも、会話のところどころに漂う違和感が観客の背筋を寒くします。中盤でカルラに、ある秘密を打ち明けるメリーおばさん。唐突に始まる不幸な身の上話ですが、ネタを探しているカルラにとっては、垂涎の品。「もっとくれ状態」になっています。観客側からはその危うさが見て取れるのですが、主人公だけがネタ探しに夢中でその違和感に気づいてないギャップがいいですね。昨今のSNSや現代社会の風刺的な要素も見え隠れする構成となっています。

ついに羊人間登場

そしてついに登場する羊人間。その見た目は、あの「レザーフェイス」を彷彿とさせるほどの不気味さ。最初の犠牲者は…ホラー映画あるあるですね(笑)「もう、最初から分かってた~」と思わず言ってしまいそう。そしてそう!ここで、私は気付いてしまったのです。(羊人間の中の人は、実はイケメン俳優さんでは?)と。なぜならカットの端々に映る羊人間のシルエット。たくさんの詰め物や被り物で体と衣装の境界線があやふやになってはいますが、なんだか妙にスタイルがいい…。そして獲物を追いかける時の洗練された動き…。無駄にかっこいい。色々調べてはみたものの、中の俳優さんの正体は分からなかったです。残念。

正論で論破!主人公の逆襲

物語のクライマックス、理不尽に仲間を失い、自らも捕らわれたカルラがメリーおばさんに立ち向かう場面がこの映画で私が最も好きなシーンです。狂気に満ちた主張を繰り返すメリーおばさんに対し、カルラが起死回生の鋭い正論をぶちかまします。ど正論を突き付けられ半狂乱になるメリーおばさんですが、ここはカルラの完全勝利。気持ちいいほどの正論で、観ていてスカッとする瞬間でした。

まとめ

『メリーおばさんのひつじ』は、童謡の無垢なイメージを恐怖に変える斬新なホラー映画です。ビジュアルやキャラクターの設定も楽しめます。ホラー界に誕生した新たなヒール「羊人間」を、皆さんも是非、視聴してみて下さい。