
中田秀夫監督作品ホラー映画特集:#3『クロユリ団地』
中田秀夫監督作品、第3回は2013年に公開の映画『クロユリ団地』です。古典怪談「牡丹灯籠」のような雰囲気を持ちつつ、「団地」という舞台を活かした新たな恐怖が描かれています。古典怪談「牡丹灯籠」は女の幽霊に男が魅入られ、誘われ、最後には取り殺されるお話しですが、「クロユリ団地」では男女ではなく姉弟バージョンともいえる展開が印象的です。今回は、この映画の面白さや恐怖のポイントについてご紹介します。
違和感を生むカメラワークがすごい
まず、注目してみてほしいのはこの映画の冒頭のカメラワークです。三人称視点と一人称視点が交互に切り替わり、観客に違和感を与える仕掛けになっています。物語が進み、主人公の悲しい過去が明らかになる時、このシーンが伏線として機能して活きてくるので、是非注意してみてほしいと思います。このシーンだけではなく、他のシーンもあとから振り返ると、「そういうことだったのか」と思う箇所が随所にありますので、1度ならず、2度3度観て、伏線の回収を楽しんでみても面白いかもしれません。
しれっと存在するミノルくん
主人公がクロユリ団地に引っ越した翌日、公園で一人遊びをしているミノルくん登場です。「こんにちは」と声を掛けられ、恥ずかしそうに逃げていく様子が、普通の子どもそのものの反応であり、好ましくもあるほどです。あまりにも自然に描かれているので、1999年の映画『シックス・センス』と同程度の衝撃かと思います。この子ども子どもしているミノルくんが、恐ろしい姿で毎夜主人公の家に呼びに来る展開になろうとは…。
「正体の明かし方」が恐怖を決める
人間の感じる怖さは、「正体不明の何かに対する圧倒的な畏怖」によるものだと言われています。どれだけ合理的な理由を考えても、その存在感を消し去ることが出来ない圧倒的な恐怖。私たちホラー好きが切望してやまない感覚ですね。ですので、ホラー映画はその正体をどこまで見せるかで、恐怖の質が変わってくるんですよね。『クロユリ団地』では、ミノルくんの正体を明かした方が良かったのか、語るのもおぞましいなにかがクロユリ団地で過去にあったのだと観客に思わせる描き方が良かったのか、考えてしまいました。もしかして…と想像させ、気づかせる。私たちホラー好きはいつだってはっとしたいですよね~、じんわり怖い…と思いたいですよね~笑
まとめ
『クロユリ団地』は、現代の団地という身近な空間を舞台にしつつ、日本人が持つDNAに響く古典怪談のような雰囲気を持ったホラー映画です。中田秀夫監督の恐怖の演出は健在で、かすかに聞こえる音の怖さや、ビジュアルの不気味さなど、見どころがたくさんあります。ぜひ、視聴してみてください!