中田秀夫監督作品ホラー映画特集:#4『それがいる森』

「それがいる森」レビュー:ホラーではなく、千貫森への愛に満ちた再生物語

中田秀夫監督作品特集第4回目は2022年4月公開の『それがいる森』。中田秀夫監督と聞けば、誰もが『リング』の恐怖を思い浮かべると思います。ですが、『それがいる森』はそのイメージをいったん置いて、まっさらな気持ちで観るのが正解です。なぜなら、本作はホラーというより「真面目に作られたコメディ」だからです!

予想外の作風とコメディ要素

映画を観終わってまず思ったのは、「あれ、ホラーはどこへ?」ということです。世間のレビューを見ても酷評が多く、ホラー映画としての期待を持って観ると肩透かしを食らうのは間違いありません。確かに不気味な演出はあるものの、本気で怖がらせようというより、全体的にどこかユーモラスな空気が漂っています。ツッコミどころも多く、ツッコまずにはいられません!特に、宇宙人の造形や登場シーンは、ホラーというよりむしろ特撮ものかと思って、笑ってしまうほどです。

福島・千貫森へのリスペクト

「ここまで笑わせに来るとはなにごとだ!?」と疑問符がつくなか、なんとか視聴を続けると、本作には明確なこだわりがあることに気づきました。それは、福島県に実在する千貫森へのリスペクトです。千貫森は、UFO伝説のある不思議な場所として知られており、本作の舞台設定やストーリーの要所にその要素が組み込まれているのです。映画に登場する宇宙人が、典型的な「グレイタイプ」であるのも、この土地の伝説を踏まえたものだといえます。単なるB級SFのように見えて、実はロケーションや背景設定にしっかりとしたこだわりがある点は評価したいです。
実在の千貫森の様子はこちら→https://findfukushima.jp/3793

実は「家族の再生物語」だった

そして何より、本作の本質はホラーでもコメディでもなく、「家族の再生の物語」にあるのではないでしょうか。主人公は職を失い、人生に行き詰まった男。彼が不可解な出来事に巻き込まれる中で、家族との絆を取り戻していくというテーマがしっかりと描かれている点に注目です。もしかしたら宇宙人の存在は、その過程を象徴的に表しているに過ぎず、本作の核心は人間ドラマにあるのではないかと考えます。ホラー映画としての評価を求めると厳しくなりますが、家族映画として観ればまた違った印象を持てるかもしれません。

まとめ:期待するジャンルを間違えなければ楽しめる

『それがいる森』は、少なくとも純粋なホラーを求める人には向いていません。しかし、千貫森という土地に対するリスペクトや、家族の再生というテーマに注目すれば、意外と味わい深い作品です。ホラー映画のつもりで観るとがっかりするかもしれませんが、奇妙なコメディ&家族ドラマとして楽しめば、それなりに面白い一本だと思いますので、ぜひ、ツッコみながらご視聴ください。